ベトナム不動産を外国人が購入できる条件とリスク

2019年2月22日不動産,資産運用

ベトナムの不動産は、国から許可された外国人購入・所有権可能の不動産であれば、条件付きで外国人でも購入できます。(外国人は、土地の購入はできません。)

2015年以前は、外国人の不動産購入の条件が厳しかったですが、現在では緩和されています。とは言っても、外国人が不動産を購入するには、まだまだ規制が多いのがベトナムの現状です。

  • 追記: 外国人名義で購入可能な不動産の権利書(レッドブック/ピンクブック/不動産登記簿)は、プロジェクトにもよりますが、発行されないことの方が多いです。発行されずとも売買は可能です。(土地使用権売買については、必ずピンクブックがあります)
  • 購入の定義: 50年の使用権購入(更新可)。日本のような所有権ではありません。
  • コンドミニアム: 日本のマンション・アパートと同義。
  • レジデンス: 日本の高級マンションと同義。
  • ヴィラ: 高級戸建て。居住者以外敷地立ち入りができないゲーテッドコミュニティになっていることが多い。
  • コンドテル: コンドミニアムホテルの略。ホテルの一室を所有し、宿泊利用状況に応じて4割~の利益を得られるもの。

ベトナムにおける外国人が不動産購入できる条件

外国人がベトナムの不動産を購入するための条件
  • ベトナムに入国可能な個人(ビザなしでもOK)
  • ベトナム国内の外資系企業(社宅活用のみ)
  • 利益を目的としない住宅目的であること
  • 国から外国人購入が許可されたプロジェクトであること
  • デベロッパーか外国人名義からの購入であること(ベトナム人名義からの購入不可)
  • デベロッパーによっては無犯罪証明書の提出
  • 不動産購入の資金の出処を証明する書類の提出(マネロン防止のため)
  • ベトナム国内の銀行口座を保有していること
  • 売却相手は外国人に限定(ベトナム人に売却不可)(使用権の引き継ぎ)
  • 各種税金はベトナムで支払うこと

利益を目的としない住宅目的であること

特に注意すべきことは、「外国人個人も外資系企業も、利益を上げることを目的とした転売や賃貸はできない」ということです。

あくまでも住宅目的となり、個人であれば自分が居住するか利益を目的としない第三者への賃貸、企業であれば社宅として利用しなければなりません。

「じゃぁ、あまり意味ないじゃん!」と思うかもしれませんが、実際そのとおりです。

ただし、利益を上げる目的の賃貸や転売ができないというだけで、「住宅目的だけど住んでいない期間を第三者へ貸したい」「住まなくなったから売却したい」というのはOKです。

この話を聞くと「これ、どのへんからアウトなの?」と思うのですが、不動産を購入した外国人が利益を得ていたからという理由で罰せられたなんて話は聞かないので、だいたい大丈夫なんじゃないかと思います。私もこのあたり実際どうなのか曖昧ですし、よくわかっていません。

売却相手は外国人限定

あともう一点注意すべきことは、「売却するときに外国人相手にしか売却できない」ということです。50年の使用権の引き継ぎという形になります。

売る相手が外国人だけを対象となるとかなり限定されてしまいますし、海外で不動産を買うような外国人は、よほど立地が良いとか付加価値が高いとかでない限り、中古物件を買う人は少ないと思います。それに、使用権の引き継ぎとなると、残り期間が少なくなるのもデメリットです。

デベロッパーや不動産会社も物件を売ること優先なので、外国人が買った先のことまでは説明してくれません。

「買ったのはいいけど売れない」なんてことになりかねないので、外国人名義でベトナムの不動産を買う人はリスクを踏まえた上で、よく検討した方が良いです。

そこで、「だったらベトナム人に名義借りればいいじゃん!」と安易な考えになった人は注意です。不動産の名義貸しは違法ですし、実際に名義貸しで土地を購入した外国人(多くは中国人)がおり、金銭トラブルも多く問題になっています。

金銭トラブルになってもそもそも名義貸しは違法ですから、公安に問題を訴えても名義を借りた外国人も口座凍結やビザ発給の停止などで罰せられてしまいます。

家賃収入や売却益は、ベトナムから国外へ簡単には送金できない

外国人の不動産購入の条件ではないのですが、注意事項として「家賃収入や売却益は、ベトナムから国外へ簡単には送金できない」ということもデメリットの一つです。

ベトナムは社会主義国家であり、通貨の持ち出しに厳しい規制があります。ベトナムドンを外貨へ両替し、海外へ持ち出すということは、そう簡単にはできません。

利回り保証のあるコンドテルなども含め、契約書や権利書、購入証明書、賃貸許可書、家賃収入の証明書、納税証明書、レッドインボイスなどのすべての各種書類を国の機関へ提出し許可を得なければ、海外へ送金できないので大変面倒です。

家賃収入や売却益を海外へ送金するための必要書類を有料で用意してくれるデベロッパーや不動産仲介会社もあるようですが、公証役場で認証された個人の身分証明書や住所確認書類、収入証明書、銀行口座の残高証明書などは自分で用意し、現地の銀行への送金手続きも自分でしなければならないのでやはり面倒です。(オンライン海外送金は不可です。)

ただし、ベトナム国内でこれらの収入を使う分には問題ないので、移住者や長期在住者は日本へ送金できなくても問題はないかと思います。

もし、日本在住者でベトナムの不動産を購入後に家賃収入がある場合ならば、ベトナム旅行のときに引き出して使うということも考えられます。

その他の方法としては、家賃収入や売却益の納税分を差し引いて証明が確定した金額であれば、5,000USDまでを手持ちで日本へ持ち出すことは可能です。(*外貨5,000USD分のみ。ベトナムドンは1,500万ドン上限)

また、家賃収入の入る銀行発行のVISAデビットカードを作り日本で利用することもできます。このデビットカードを作る方法が一番現実的かと思います。

ベトナムの不動産所有に関する税金

ベトナムで不動産を購入・賃貸・転売をするのであれば、当然ですが各種税金が発生します。

販売価格ピッタリ用意すれば買えるというわけではないので、不動産会社を通している場合は仲介手数料なども考慮した上でお金を用意する必要があります。

不動産購入時

VAT(付加価値税)10%
不動産登録税5%

VATは付加価値税というものですが、日本の消費税のようなものと考えてもらうとご理解できるかと思います。

上記の税金の他、不動産会社を通している場合は仲介の手数料を取られることもあります。(だいたいは購入金額に含まれています。)

あとは、不動産登記をするときに登記手数料がかかることもありますが、こちらも購入金額に含まれているのが一般的です。デベロッパーや不動産仲介業者によって異なるので、購入前に諸費用の確認は必要です。

不動産賃貸時

VAT(付加価値税)5%(年間家賃収入1億ドン(約50万円)以下であれば免除)
所得税5%(年間家賃収入1億ドン(約50万円)以下であれば免除)
営業登録税年間 100万ドン~500万ドン(約5千円~2万5千円)

賃貸に出したときかかる税金は、VATと所得税合わせて家賃収入の10%です。年間家賃収入が1億ドン(約50万円)以下であれば免除されますが、だいたいの人が1億ドン以上になるのではないかと思います。

ベトナムの税制については、私はローカルの税理士に一任してしまっているので、詳しくはありません。
ベトナムで各種税金を払うときは、税理士にお願いした方がスムーズですし簡単です。税理士に頼らず自分で納税しようとしたことがある人ならご理解いただけると思いますが、行政機関の窓口も不親切だし何が正しくて何が間違っているのか曖昧だし、めちゃくちゃ大変でストレスになるだけです。

新築物件の内装は自分で手配

コンドテルであれば内装込みの価格で販売されていますが、新築コンドミニアムは、内装は自分で手配で費用は別途必要というのが基本です。

内装業者を自分で探して…となると信頼できる業者もイチから探さないとだし、打ち合わせや費用の交渉など時間がもったいなくてやってられません。

ダナンとクイニョン以外の都市ではわからないのですが、私の経験では、内装業者はデベロッパー(開発業者)が紹介してくれることがほとんどです。

内装デザインは、業者が今まで施工した例などの写真やパースを見せてくれるので、「全く同じでお願い!」となれば余計な打ち合わせなどせずに、内装費用もすぐに見積もりができます。

ただし、自分の好きな内装にしてもらうためには、やはり2~3回ほどの打ち合わせが必要です。内装費用については、家具や家電込みで1平米200ドル~400ドルを大まかな予算としてみておけば良いと思います。

1平米200ドル以下でできる内装業者もありますが、資材も施工品質も低くなります。特に木材は、シロアリ対策の薬剤をしっかり染み込ませたものを使わないと、翌年以降シロアリに食い尽くされ大変なことになります。

施工場所、家具、家電と項目毎に細かく費用を見積もりしてくれる内装業者もいれば、平米単位で見積もりをする内装業者もあります。

ベトナムの内装業者における木材家具は、自社・提携工場で製作されることが多いので、希望のオリジナル木材家具も作れる範囲で作ってくれるメリットもあります。ただし、品質は落ちるので2年程で家具の木材が割れたり、折れたりすることはよくあります。

冷蔵庫、電子レンジ、テレビ等の家電については、内装業者に依頼すると手数料で10%程高くなるので、面倒でなければ自分で購入した方が良いです。ポイントやマイルの貯まるクレジットカードを使うとお得です。

英語ができない内装業者もたまにいるので、紹介してくれたデベロッパーや不動産仲介業者に確認した方が良いでしょう。ベトナム語のみの場合は、トラブルを避けるためにも、購入を見送るか通訳を雇うしかありません。

尚、中古物件は、内装(家具・家電)がついていることがほとんどです。

デベロッパーや内装業者に期待しないこと

デベロッパーや内装業者に期待をしない方が良いです。

日本とは考え方も仕事の仕方も全くかけ離れているので、日本の常識で考えていると必ずトラブルになります。

ベトナムで仕事をしたことがある人なら理解してくれると思うのですが、「依頼したことがやってない・約束の日を過ぎても見積もりこない・家具の色が違う・そもそも依頼した家具ではない・施工がテキトーで雨漏りする・壁や床を汚される・ドアや窓を壊される・新品の家具や家電に傷をつけられる・納期も遅れる・約束を守る方が珍しい」なんてことは日常茶飯事です。私は今まで何度も失敗しました。。。

とりあえずの注意点としては、物件購入前にデベロッパーと内装業者側の瑕疵担保責任の期間(保証期間)を必ず確認することです。

内装込みの新築コンドテルなら、利回り保証期間中はデベロッパーが対処してくれますが、新築のコンドミニアムやヴィラとなると1年が一般的です。

購入前のデベロッパーや内装業者との打ち合わせでは、あとから言った言わない論争が起きないように、なるべく対処した方が良いです。

打ち合わせで細かいくらい確認して、会話の録音など徹底した方がリスクを減らせます。少しでも疑問に感じたことはそのままにせず、その場で確認回答をもらった方が良いです。物件の写真を細かく撮って記録として残しておくのも良いでしょう。

それでもトラブルが起こるときは起こるし、どれだけ対処しても言った言わない論争が起こるときは起こるので、本当に業者に期待しない方が良いです。

不動産仲介会社によっては、内装の手配や調整まで有料でやってくれるところもあるようですが、私は利用していないので実際どうなのかは分かりません。直接、内装業者とやり取りするよりも、仲介してやってもらった方がストレスは少なくなるかもしれません。

私の場合は、何度もの失敗の中で相性の合う内装業者を見つけたので、いつもその内装業者にお願いしています。

私がいつも依頼している内装業者は、高級コンド、高級ヴィラ専門なので少し相場より高いですが、他の内装業者よりも全然丁寧にやってくれます。融通が利き、数年後に家具が壊れても無償で直してくれるので助かっています。

ベトナムの不動産を購入したあとの維持費

日本でもそうですが、マンションやコンドテルを購入したあとも「管理費・修繕積立金・管理委託料・駐車場利用料・固定資産税・任意で火災保険」のような維持費がかかります。

具体的にいつからこれらの維持費が発生するのかは、契約書に記載されているのできちんと確認する必要があります。一般的には物件が引き渡しされた当月または翌月からです。

ハノイ市・ホーチミン市・ダナン市と各都市によって、不動産の維持費が若干異なるような印象があります。

私はダナンとクイニョンでしか不動産を持ってないので、この2都市のことについてしかお話できないのですが、下記が各維持費の平均的な相場です。

ベトナム不動産の維持費
  • 管理費: 33,000ドン前後/㎡(約170円)
  • 修繕積立金: 管理費に含まれる
  • 管理委託料: 借主を見つけてもらう場合は家賃の1ヶ月分
  • 駐車場利用料: 借主が支払う
  • 固定資産税: ~2%
  • 火災保険: 保険会社により異なる(任意)

管理費は、平均的に1平米33,000ドン(約170円)なので、60平米の1ベッドルームであれば1,980,000ドン(約1万円)が毎月かかる計算です。

ホーチミン市やハノイ市は、管理費が安いイメージがあるので、リゾート地ダナンはベトナムの中でも不動産管理費は平均的に高いかと思います。

管理委託料は、ローカルの不動産管理会社へ借主の募集から契約管理までを委託する場合に発生します。自分で借主を見つけ契約管理も自分でする場合は管理委託料は不要です。

私は、日系含め外資系の不動産管理会社へ委託したことがないので、ローカルの不動産管理会社以外の費用やサービス内容は分かりませんが、賃貸募集だけではなく物件管理までお願いしたいなら、そういったサービスを提供する不動産管理会社へ委託した方が便利です。

不動産管理会社へ委託した場合は、家賃の1ヶ月分が費用になるので、物件オーナーは年間11ヶ月分の家賃収入しか見込めないことになります。

想定していた利回りよりも低くなる可能性

デベロッパーや不動産仲介会社から事前に聞いていた(表面)利回りよりも、実質利回りはかなり下回る可能性は高いです。

例えばですが、60平米 120,000 USDの物件で家賃500 USD(年間6,000 USD)で賃貸を想定していた場合、表面利回りは5%となりますが、内装費と毎月の管理費と毎年の管理委託料を考慮すると、下記の計算により2.74%の利回りになってしまいます。

  • 物件価格: 120,000 USD(60㎡)
  • 内装費: 60平米 × 300 USD = 18,000 USD
  • 管理費: 60平米 × 1.5 USD × 12ヶ月分 = 1,080 USD
  • 管理委託料: 年間1ヶ月分 = 500 USD
  • 家賃: 500 USD / 月
  • VAT: 25 USD / 月
  • 所得税: 25 USD / 月
  • 営業登録税: 100万ドン(約45 USD) / 年間
  • 初期費用: (物件価格)120,000USD + (内装費)18,000USD = 138,000USD
  • 年間収益: (年間家賃)6,000USD - (管理費)1,080USD - (管理委託料)500USD - (各税金)645USD = 3,775USD
  • 利回り: 3,775USD ÷ 138,000 USD × 100 = 2.74%

上記のように利回り5%でも想定する実質利回りは2.74%になってしまいます。もちろん、常に満室の時を想定した計算ですから、空室があれば利回りは低くなります。

それに、ベトナムドン安になった際は、さらに利回りは低くなりますし、ベトナム国内居住者であれば、インフレになった際の影響もあるでしょう。

インカムゲインを狙う投資であれば、購入前に物件の平米数から内装費用と維持費がどのくらいかかりそうか計算した上で、想定する実質利回りをしっかり把握することも大切だと思います。

ベトナムは年々不動産価格が上昇しているので、「俺はキャピタルゲイン狙いだから問題ない!」という人なら、この話はあまり関係ないかもしれません。

しかし、将来がどうなるかなんてことは予想できないものです。前述したように、インフレや通貨安で想定していた利回りよりも低くなる可能性だってありますし、戦争や感染症のパンデミックで、不動産価格が下落する可能性だってあります。

「絶対に・確実に・100%・大丈夫」というリスクを無視した投資はあり得ないので、デベロッパーや不動産仲介会社がこういう売り文句を使っているならば、そこは信用しない方が良いと思います。

まとめ

「ベトナムの不動産は買い時」「ベトナムの不動産は価格が上昇し続けている」という話を、2019年頃からよく耳にするようになりましたが、私の感覚ではもうバブルなんじゃないかなと思います。

個人的には、今から不動産の売却益を狙うよりも、立地が良くて人気があり売却もしやすく価格がなるべく下落しないようなインカムゲイン狙いの不動産物件を選ぶ方が適していると思います。

でも、既に不動産価格が上昇してしまった現在に、そのような優良物件を見つけるのも中々難しいですけどね…