裁定取引とは?裁定取引を利用した取引方法

このブログで度々話になる裁定取引(さいていとりひき)ですが、「何それ?」っていう人もいるかと思うので簡単に説明します。

「裁定取引なんていう初歩的な知識知ってるよ!」という人は、読まなくても大丈夫です。(苦笑)

私は裁定取引のプロでも金融のプロでもないので詳しくは説明できませんが、裁定取引をやって少なからず利益を得ていますし経験もあるので「だいたいこんな感じ」というのはお伝えできるかと思います。

尚、裁定取引の他にペアトレードという取引手法もあります。この記事では、とりあえずペアトレードも裁定取引の一つとして説明しています。

裁定取引とは

裁定取引は、同じような値動きをする異なる2つの銘柄を対象に、需給のバランスが崩れ値動きの歪み(価格差)が生じたときに、「割安な方を買い、割高の方を売り」の注文をして、価格差がなくなったときに決済して利鞘(りざや)を稼ぐ取引手法です。

同じような値動きの銘柄同士で売りと買い注文を同時に行うので、リスクを抑えて利益を狙える取引方法です。

裁定取引

上記画像は慣れないIllustratorでパッと作った図解なので見づらくてすみませんが、緑のラインがA銘柄・赤のラインがB銘柄とした場合、この異なる2銘柄は途中まで同じような値動きをしていますが、需給バランスの崩れなどをきっかけで歪み(価格差)が生じるときがあります。

この価格差が生じたときに、割高の緑のA銘柄を売り、割安の赤のB銘柄を買い、その後価格差が収束したときに決済すれば差益を得られるという仕組みです。

元の鞘に収まるように見えることから裁定取引は「サヤ取り」とも言われたりします。ちなみに英語では、アービトラージ(Arbitrage)で、海外の機関投資家の間でも最も初歩的な手法として利用されています。

同じような値動きをする異なる2つの銘柄とは

裁定取引について、ザックリとした取引手法は前述した通りですが、「同じような値動きをする異なる2つの銘柄って何?」という疑問がでてくると思います。

商品・指数・株式・債券・為替・不動産…なんでも良いのですが、似たような値動きをする投資対象はいくつも存在します。

例えば、「日経平均の現物と先物」「5108(ブリヂストン)と5110(住友ゴム工業)」「USD/JPYとUSD/CAD」などのペアです。

尚、一番ベーシックな考えでは、商品先物市場で同一銘柄の異なる限月です。例えば、「大豆の2月限」と「大豆の8月限」などです。

元々、裁定取引は商品先物市場を対象にした投資手法なので、商品先物の異なる限月で裁定取引するのが正しい使い方ですが、異なる銘柄や異なる市場間でも裁定取引やペアトレードを利用することができます。

同じような値動きをどのように見分けるのか

「2つの異なる銘柄が同じような値動きをしているかどうか」は、それぞれの値動きを表したチャートで感覚的に掴めますが、実際数値化しないとどのくらい同じ値動きなのかを理解することができません。

そこで「相関係数」という統計学的指標を使います。相関係数は、xとyの類犠牲を数値化した指標です。

相関係数(そうかんけいすう、英: correlation coefficient)は、2つの確率変数の間にある線形な関係の強弱を測る指標である。相関係数は無次元量で、−1以上1以下の実数に値をとる。相関係数が正のとき確率変数には正の相関が、負のとき確率変数には負の相関があるという。また相関係数が0のとき確率変数は無相関であるという

引用 Wikipedia – 相関係数

Wikipediaは何だか難しい解説をしていますが、ようするに相関係数を計算して、「1」に近い程類似性があると判断され(正相関)、「0」に近い程類似性が無く、「-1」に近い程、反対の動きをしている(逆相関)ということです。

相関係数を求める計算式は少し複雑で自分で計算しようとすると大変なのですが、EXCELをつかうことで簡単に求めることができます。

=CORREL(配列1,配列2)

配列1に銘柄Aの終値、配列2に銘柄Bの終値を、それぞれ6ヶ月分程のデータを入れてEXCELで計算することで、どのくらい類似性があるのか相関係数を求めることができます。

過去の日足データは、証券会社のサイトやチャート配信サイトなどからCSVとして取得することができます。グーグル検索で「銘柄名 日足データ」「銘柄名 過去データ」などで検索すると見つかります。

外部サイト 株式投資メモ-株価DB

こうして計算された相関係数が、0.7以上であれば相関性があると判断することができます。0.8〜0.9くらいの相関係数があるペアが望ましいです。

私の経験上、0.8以下の相関だとサヤが広まったまま元に戻らないとか、0.9よりも高い相関だと逆にサヤが広まらりづらいなどのデメリットがあるためです。

厳密に言うと裁定取引とペアトレードは、相関係数が1.0かそれ以外かで下記の違いがあります。

    • 裁定取引(アービトラージ)

      条件: 相関係数1.0。同一市場のペアで価格差が生じたときに仕掛ける取引。

      対象ペア例: 日経平均の現物と先物など。

    • ペアトレード(ストラドル)

      条件: 相関係数が~0.99。同一市場又は異なる市場間のペアで価格差が生じたときに仕掛ける取引。

      対象ペア例: 5108(ブリヂストン)と5110(住友ゴム工業)など。

裁定取引は理論上リスクなしで利益をあげることができますが、ペアトレードは相関が崩れると損失になるリスクがあります。

この記事では、ペアトレードも裁定取引の一種として説明しています。

裁定取引を利用した取引方法

裁定取引と相関係数の概要については理解できたかと思います。

では、具体的にどうやって裁定取引をするのかについて簡単にご紹介していきます。

どのタイミングで仕掛けるのか

前項で相関係数により相関性の高い銘柄のペアを見つけたら、仕掛けるタイミングを見つける必要があります。

2つ銘柄を重ねて表示したチャートで視覚的に見た場合、「A銘柄とB銘柄の値動きの価格差が生じてきた(サヤが広がってきた)から、この辺で売りと買いの仕掛けをしよう!」と曖昧な判断になってしまいます。

裁定取引

この上記のチャートでも視覚的にこの辺かな?という判断はできても、具体的にどのくらいの価格差があるときに仕掛けて良いのか検討できません。

そこで、ヒストグラム(Histogram)という統計グラフを用います。ヒストグラムを用いることで価格差のデータのばらつき具合を確認し、どのくらいの価格差で仕掛ければ良いのかを判断することができるようになります。

ヒストグラムを利用する

ヒストグラム(英語: histogram[1])とは、縦軸に度数、横軸に階級をとった統計グラフの一種で、データの分布状況を視覚的に認識するために主に統計学や数学、画像処理等で用いられる。

引用 Wikipedia – ヒストグラム

ヒストグラムは、品質管理の7つ道具やマーケティングで使われる統計手法なので、工業分野の品質管理や販売マーケティング分野で働いている人は馴染みのある統計グラフかと思います。

一見難しそうに感じますが、今のEXCELは優秀ですごく簡単にヒストグラムを作成することができます。

histogram

上記のようなヒストグラムがEXCELで簡単につくれます。

裁定取引で使うヒストグラムを最速で作成する手順は下記の通り。

  1. A銘柄の日足データ(100日分以上)を用意。C列セルへコピペ
  2. B銘柄の日足データ(100日分以上)を用意。D列セルへコピペ
  3. A銘柄 – B銘柄の価格差をE列に算出「=SUM(C列-D列)」
  4. E列の価格差データを選択して「挿入」→「グラフ(ヒストグラム)」を選択

histogram

上記GIF画像でザックリした流れが分かるかと思います。

ちなみにこの画像で説明した銘柄は、8411(みずほフィナンシャルグループ)と8306(三菱UFJフィナンシャル・グループ)の2銘柄を対象にヒストグラムを作っています。

外部サイト 株式投資メモ-株価DB

更に、ヒストグラムに累積相対度数のグラフも表示したい、正規分布と合わせたグラフを表示したいといった場合には、多少EXCELの関数を使う必要があります。

histogram

この辺のEXCELの話は、本筋とズレてしまいますし、一つのヒストグラムだけ表示でも問題ないので省略します。(Googleで調べると参考なるブログもたくさんあります。)

ヒストグラムをどのように読み取るのか

既にヒストグラムについて理解している人は、裁定取引にどうやってヒストグラムを使うのかもう気づいていると思いますが、価格差のばらつき具合の位置で仕掛け→決済をするわけです。

相関係数の高いA銘柄とB銘柄の価格差は、一定の範囲内で推移しています。

下記の表は、ヒストグラムのグラフを作る元のデータです。

histogram

2018年の1年間(245日)の中で、350~379円の範囲(階級)で価格差が推移した日(度数)は245日中5日しかないのに対し、470~499円の範囲(階級)で価格差が推移した日(度数)は245日中75日もあります。

つまり、度数が少ない階級に現在の価格差が位置している場合、いずれ度数の多い方向へ価格差が動くことが推測できるわけです。

この特性を利用して、下記画像のように取引に活かします。

histogram

上記ヒストグラムで例えるなら、度数の少ない緑色の範囲で仕掛け(売りと買い同時注文)をして、度数の多いオレンジ色の範囲に価格差が推移したら決済(手仕舞い)とすることで利益をあげれるという仕組みです。

この裁定取引/ペアトレードの説明を理解すると「これで俺も稼ぎ続けられるかも!」と楽観的になってしまうかもしれませんが、現代において裁定取引は年々難しくなってきています。

裁定取引/ペアトレードが難しい理由

現代において裁定取引/ペアトレードが難しくなってきている理由の一つとして、機関投資家のAIによる自動売買プログラムが市場に走っていることです。

ヘッジファンドなどの機関投資家は、当たり前ですが私のように手動でEXCELにまとめて計算なんてことはまずしません(苦笑)

巨額の金額を動かす機関投資家は、AIプログラムを駆使して過去のビックデータなどを元に完全自動取引にてミリ秒を競って日々大きな利益を得ています。

そうなると裁定取引は、AI自動取引プログラムが無かった昔に比べ、2つの銘柄の価格差はどんどん無くなってきますし、数秒から数分単位で価格差が開いたところで一瞬で価格差が収束してしまいます。

個人の投資家が太刀打ちできる相手ではありません。。。

その他にも裁定取引/ペアトレードが難しい理由がいくつかあります。

  • AI登場で個人の取引機会の損失
  • 株の場合、逆日歩が発生するとリスクが高くなる
  • 企業の悪材料や需要と供給により相関が崩れやすい
  • 仕掛けから決済まで時間がかかり効率が悪い
  • 売りと買いの同時注文で資金が2倍必要

実際に裁定取引/ペアトレードをやってみると分かるのですが、想像以上に面倒ですし思ったように利益を出せません。

そもそも海外在住者だと日本株取引は基本的にできませんし、先物取引も海外証券会社で取引できるところは限定され手数料も高いです。何より初期投資金が数百万円以上ないと納得いく利益も取れないでしょう。

関連記事 海外在住者は日本株取引ができない理由

裁定取引/ペアトレードを試したいなら

現代において裁定取引やペアトレードは、年々難しくなってきてはいますが、中長期で判断した場合のサヤ(価格差)は取ろうと思えば可能です。中長期となると数ヶ月単位の取引となるので、1日単位で稼ぎ続けなければならない機関投資家はあまり参入してこないためです。

ただし、慣れないと難しい取引手法なので、試してみたいならまずは無料のバーチャル取引で練習してみた方が良いでしょう。

日本では練習用のバーチャル口座で株取引できるサービスがありますし、海外ではFXブローカー(CFDで商品先物なども取引可)に無料の練習用デモ口座もあります。

デモ口座で良さそうなところをピックアップしました。個人的には、株取引なら「トレダビ」、国内FXなら「クリック証券」、海外FXなら「XM」が使いやすいと思います。

裁定取引に限らず、株・FX・商品CFDで取引を始めようと考えているなら、最初から大切なお金を投入せず練習用の無料デモ口座で試してみる方が良いです。

私もこれらの投資を始める前は、デモ口座から練習していましたし、今でも新しい取引手法を考えついたときはデモ口座で検証してからにしています。

尚、FXのMT4という取引ツールに「OverLay Chart.mq4」というインジケーターを挿入することで、2つの異なる通貨ペアのチャートを重ねて表示することもできます。ヒストグラムは表示されませんが、視覚的に価格差を見たいときには便利なツールです。

overlay-chart

「OverLay Chart.mq4」は、ただ単純に2つの通貨ペアのチャートをチャート表示枠を基準に重ねているに過ぎないので、そのままでは相関取引には利用できませんが、通貨間の重みを調整してポジションを持つことで多少は利用できます

外部サイト 2つのチャートを重ねて表示できる「OverLay Chart.mq4」の使い方

EXCELでの相関係数・サヤ(価格差)・ヒストグラムの算出が面倒であれば、まずはこのようなツールを利用して試してみるのも良いでしょう。