海外在住者は、日本の証券会社を利用して米国株・日本株・ETFなどの資産運用はできない理由と海外在住者の資産運用方法
海外在住者は、「駐在員、自営業、現地採用、経営者、退職者」など様々ですが、どの職種やビザの種類でも関係なく、日本の住民票を抜いて出国し、1年以上海外に居住するのであれば、日本の証券会社は基本的に使えません。
日本非居住者は全員対象でNISAやiDeCo含め日本の証券会社を使うことができません。 2022年5月から海外居住者であっても国民年金に任意加入すれば、iDeCoに加入できるようになりました。(2022年2月追記)
ただし、海外赴任や海外留学の場合は、帰国まで口座を維持できる証券会社もあります。SBI証券・野村證券・SMBC日興証券などは、帰国まで有価証券を預けておく目的として、非居住者でも口座維持は可能です。
海外赴任や留学の場合は、各社により規定が異なるので、証券会社へ問い合わせしてみるのが確実です。証券会社へ海外赴任や留学の申請をすることで、継続して利用可能な証券会社もあります。
このように海外赴任や海外留学など特別な理由がない限り、海外居住者は日本の証券会社で基本的に取引不可です。尚、銀行口座に関しては、非居住者用口座にすれば、規定の範囲で取引可能です。
たまに、海外に居住しながら内緒で日本の証券会社を通して株取引している人もいますが、日本で納税しているならグレー、納税していないなら所得税法違反、虚偽申告などの罰則に問われる可能性があります。
海外居住者は日本の証券会社を使えないため、海外居住者が日本株・米国株・ETF・投資信託などの取引をしたい際は、まずは居住国の証券会社で日本株などの商品取扱いがあるか確認します。
もし、ご自身の居住国で海外証券の取扱いがなければ、海外在住でも取引可能な証券会社で取引が可能です。
下記、海外居住者が日本の証券会社を使えない理由や海外居住者の資産運用方法について纏めています。
*今後、制度改正が行われても当記事では更新しませんので、最新情報は金融庁や厚生労働省のサイトで確認ください。海外居住する際の証券口座や銀行口座は、直接金融機関へ問い合わせして確認するのが確実です。
非居住者の定義
まずは、非居住者に該当する人の定義です。各証券会社のホームページで確認できます。
・外国にある事務所(本邦法人の海外支店等及び現地法人並びに国際機関を含む)に勤務する目的で出国し外国に滞在する者。
引用: SBI証券 – 海外転勤等の理由により出国(非居住)される方への対応について
・2年以上外国に滞在する目的で出国し外国に滞在する者。
・本邦出国後外国に2年以上滞在するに至った者。
・1年以上にわたり日本以外に居住する者。
・期間の定めのない海外転勤、海外留学。
・上記に掲げる者で、事務連絡、休暇等のため一時帰国し、その滞在期間が6ヶ月未満の者。(但し、上記に関わらず、本邦の在外 公館に勤務する目的で出国し、外国に滞在する方は、「居住者」として扱われます)
例えば、SBI証券では、(日本の)非居住者を上記の通りとしています。どの証券会社でも同じような定義を定めています。上記の何れかに該当すれば非居住者とされます。
ちなみに、所得税法の非居住者の定義は、証券会社の定める非居住者の定義と異なります。
海外に住んでいても日本で所得税を払わなくてはならないのか?については、下記の定義となります。
我が国の所得税法では、「居住者」とは、国内に「住所」を有し、又は、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいい、「居住者」以外の個人を「非居住者」と規定しています。
滞在日数のみによって判断するものでないことから、外国に1年の半分(183日)以上滞在している場合であっても、わが国の居住者となる場合があります。
1年の間に居住地を数か国にわたって転々と移動する、いわゆる「永遠の旅人(Perpetual Traveler, Permanent Traveler)」の場合であっても、その人の生活の本拠がわが国にあれば、わが国の居住者となります。
引用: 国税庁
現在は、生活の本拠(主な資産の場所)で判断しているようです。
つまり、所得税法では、海外で1年のうち183日以上生活していても、賃貸含む住宅や車、住民票などが日本にある場合は、日本居住者として判断される時があり、日本で課税されることがあります。
日本の証券会社を通して得た利益に関しては、もちろん日本で納税しなければなりません。居住国によっては、全世界所得課税の国もあります。
日本の証券会社の口座開設・口座維持条件
日本の証券会社は、日本在住者を対象にサービスを提供しているので、「日本居住者であること」「郵便物が届く日本の住所があること」「マイナンバーの提出」「日本国内からの取引」と最低限4つの条件があります。
- 日本居住者であること
- 郵便物が届く日本の住所があること
- マイナンバーを提出できること
- 日本国内から取引すること
以上の4つの条件すべてに当てはまらない場合は、日本の証券会社を使って取引することはできません。
たまに、日本非居住者に該当するにも関わらず、住所が実家で住民票を日本におきっぱなしにして、年金、住民税、所得税等を納めつつ海外で生活している人がいますが、このような人の証券会社利用はグレーです。
きちんと各種税金を納めて郵便物も届く住所があり住民票も日本にあるのなら、海外で生活してても日本の証券会社で取引できると思われます。
しかし、「4.日本国内から取引すること」の条件に当てはまらないため、頻繁に海外からのアクセスがあったら怪しまれるでしょうし、本来は証券会社の規定により禁止されているので、バレたら口座凍結されてしまいます。
海外から日本の証券会社で取引することができない理由
日本国外で金融商品取引業務を行う許可(免許)などを海外の監督官庁等から得ておらず、居住国の法令諸規則に則った対応を行うことはできません。
引用: SBI証券
日本の証券会社は、日本の金融庁による金融商品取引業の免許を取得して営業しています。しかし、海外で営業するための免許を持っていないため、海外からのインターネット取引も含めた取引には対応していないということです。
つまり、海外から日本の証券会社を通して取引できないのは、非居住者は日本国内で金融商品を取引できないという法令諸規則が金融商品取引法にあるからなのです。
金融商品取引業者の顧客で海外居住者が取引していたことが金融庁に分かってしまうと、金融機関側も金融商品取引法違反になる可能性があるわけです。
これらの理由から、どの証券会社へ問い合わせても「海外へ居住しても取引を継続してできますか?」と聞くと、サポートの方から「口座を解約してください」と言われてしまいます。
実際に私がそうでした。私は、海外居住前の2010年に各証券会社(楽天証券・SBI証券・GMOクリック証券・松井証券・DMM FX、みんなのFX、外為どっとコム)へ海外居住の件を相談しましたが、全ての証券会社のサポートから口座解約を勧められました。
一部の証券会社では、海外赴任や海外留学に該当する人のために「口座解約はしないけど、帰国まで有価証券等を預けられる」というサービスを提供しているところもあるものの、私のように日本から転出届を出して年金も支払わず海外に長期居住する人は、海外移住前に日本の証券会社はすべて解約する必要があります。
国内非居住者の場合、弊社でお取引を行うことはできません。
そのため、国外に転出される場合、弊社でお預りしているご資産を売却、出金、他社へ移管等により残高を0にしていただき、総合取引口座の解約のお手続きをお願いいたします。
引用: 楽天証券 – 海外へ転勤することになりました。何か手続きは必要ですか?
銀行でも海外居住する場合は基本的に口座解約になる?
尚、証券会社だけではなく銀行口座も、海外居住する場合は基本的に口座解約を勧められます。
銀行口座も証券会社と同じように海外赴任や海外留学など、日本へ帰国予定のある人は、一部取引を制限した上で非居住者向けの銀行口座サービスを利用できます。
非居住者向け銀行口座サービスは、既に対象銀行の口座を持っていてこれから海外赴任や海外留学する人向けのサービスなので、出国して海外居住してしまっている人は、新規で口座開設できない点は注意が必要です。
もし、海外赴任前、海外留学前で、銀行に手続きしていない人は、非居住者向け口座の手続きを済ませておきましょう。
海外赴任や海外留学以外の海外居住者でも、今のところ銀行へのマイナンバーは「提出お願い」だけで「強制提出」ではないので、密かに使っている人は多いと思います。
ただし、今後は、マイナンバー提出していない人は取引制限がかかることや口座凍結になる可能性はあるので、事前にそれらのリスクを考慮した方が良さそうです。
海外在住者が密かに日本の証券会社や銀行を使っていた際に罰則はあるの?
私が海外居住前に、SBI証券へ「海外居住の件」について問い合わせた際、海外居住者が密かに証券口座を使った場合の罰則については「口座凍結」という回答をもらっています。つまり、口座へログインできず解約まで口座が保留にさせられる状態です。
これはSBI証券に限らず、どの日本の証券会社でも同じ回答かと思います。
自分で「実は今海外に居住してるんです。」と取引中の証券会社や銀行へ問い合わせするのは止めた方が良いです。海外居住を自己申告しているわけなので、口座凍結になってしまいますし、かなり厳しいお叱りを受けます。(知人談)
尚、銀行についても、海外居住であることを銀行へ伝えてしまうと、口座凍結、または、帰国した際に必ず解約するように怒られます。
それに、海外から日本の自分の銀行口座宛への送金は、銀行へマイナンバー提出ができなければ受取不可です。既に、銀行へマイナンバーを提出済みでも、金額が大きいと再度、マイナンバー提出を求められることもあります。海外から送金したけどマイナンバー提出できず受取不可で、送金した金額が手数料引かれて結局戻されたという話はたまに聞きます。
口座凍結されても流石に口座に入っているお金が出金できない(吸い取られる)なんていう悪質業者みたいなことはないでしょうが、解約まで出金不可で取引中の株などがあった際は大損する等のリスクはあるでしょう。
海外からの日本の証券会社を通した取引はバレる?
「それでも、証券会社に内緒で海外から取引してもバレないし大丈夫なんじゃないの?」
と内緒で使おうと考える人は多いです。しかし、証券会社によってはアクセスIPで居住地を判断するところもあるので、バレるときはバレます。
そして「IP判断ならVPN使えばバレないじゃん?」と悪知恵を思いつきますが、VPNだとアクセス速度が落ちるので、売買高の高い銘柄の板情報は遅延でズレて表示されてしまい成行注文だとエラーになるときがあります。それに、もし万が一バレたときは口座凍結となり決済することさえできなくなるリスクがあります。
VPNサービスを利用する場合も、固定IPかVPNサービスを提供する専用IPの範囲があるので、証券会社側がVPNサービスのIP範囲を把握しているとバレます。(日本の実家で自宅VPNを通すならバレないとは思いますが)
私も過去にVPN通して海外から株取引をやったことがありますが、小心者の私はリスクの方が怖くて一時帰国したときに証券会社口座をすべて解約してしまいました。
DMMグループとGMOグループは、VPN提供会社の対象IPを把握しているのでVPNサービスを利用してもNGです。以前、VPNを利用していてもアクセス制限されてしまいました。
もし、海外からどうしても日本の証券会社を通して売買したいというならば、「帰国して口座解約手続きするまで決済や出金不可になるかも」という口座凍結のリスクを覚悟した方が良いでしょう。
まぁでも、そのリスク覚悟で海外から取引している人も結構多いとは思います…
実際に証券会社へ問い合わせた話と経験談として私がいえることは、「バレないときはバレないし、バレるときはバレる。バレたら口座凍結と取引中の株などが決済できずに大損するかもしれないし、解約まで出金もできなくなる」という曖昧なことしか言えません。
海外から取引して口座凍結の罰則を受けた!という話も、私の周囲では聞いたことがありません。
日本以外の証券会社にしなければならない
さて、各社規定と法的な観点から見た場合は、海外居住者は日本の証券会社で売買取引できないということが分かりました。
そのため、規則を守り正々堂々と海外で居住しながら資産運用するためには、日本の証券会社を通さない別の方法を考える必要があります。(日本の年金加入をしていれば、iDeCoは利用できます)
海外居住者の資産運用方法
考えられる海外居住者の株などの資産運用方法は、主に以下の5通り。
- 現地の証券会社で個人口座開設
- 海外在住でも可能な証券会社で口座開設
- 銀行口座の外貨預金
- 不動産投資
- プライベートバンクで資産運用
「資産運用」という幅広いカテゴリの中で、主に上記5つの方法が確度が高い案かと思います。
厳密に言うと日本の証券会社は、法人口座にすれば代表が海外にいても日本の証券会社で株取引は可能ですが、結局本人確認でマイナンバーなど提出しなければならないので除外としました。
1. 現地の証券会社で個人口座開設
日本の証券会社で取引ができないとなると、まず考えるのは「現地の証券会社はどうか?」ということ。
外国人が現地の証券会社で口座を作ることができる国も多数あります。シンガポールや香港などでは、一部限定された日本株含めた個別株、ETFやファンド等を現地証券会社から取引することができます。
ただし、日本株に関しては、日本国内証券会社よりも手数料は当然高くなります。
また、現地の口座を作るにあたり英語は必須になります。大切な資産を預けてある個人情報になるので、基本的には通訳を通した口座開設はできません。
しかし、日本語担当者が在籍している証券会社もあるので、そういう日本語対応の証券会社でしたら、英語が苦手な人でも口座を作り取引もスムーズになります。
尚、私の住むベトナムでも、日本語担当者が在籍する現地証券会社があり、外国人が証券会社の口座を作ることができます。ただし、取引できるのはベトナム株や国内ETFなど国内向けの証券のみで、外国株、海外ETF、海外ファンドなど海外商品の取引は不可です。
現地証券会社を通して居住国の株式市場への投資というのは、海外居住者の資産運用の一つとして考えられる手段です。
しかし、欧米日の各国の個別株やETFへ投資できないのであれば、次項の「海外在住でも取引可能な証券会社で口座開設」が候補になります。
2. 海外在住でも取引可能な証券会社で口座開設
現地の証券会社で口座開設が難しいのなら、海外在住でも口座開設・取引が可能な「海外の証券会社を検討」という案です。
有名なところでは下記の3社が該当します。
(*海外の証券会社をネットで調べた結果、下記3社が該当しただけです。私自身、下記3社の証券会社は使用したことはありませんので、実際の使用感などは分かりません。ご利用は自己責任でお願いします。)
- フィリップ証券(シンガポール)
- Interactive Brokers LLC(IB証券)
- Firstrade証券
まず、フィリップ証券は、海外在住者でも日本株や米国株などを取引できる一番良い案かと思います。Phillip Capital Groupは1975年にシンガポールで創業している運営実績もあるので信頼度も高いです。
フィリップ証券は、世界15カ国の地域(マレーシア、タイ、香港、中国、日本、インド、英国、豪州、アメリカ等)に拠点があり、シンガポールを本社にしています。世界100万人以上の顧客がおり、シンガポール、日本、香港やアメリカなどの主要な市場は勿論のこと、タイ、インドネシアやマレーシアなど東南アジア諸国など、計19のマーケットでの売買が可能です。
海外に居住する日本人専用の日本語デスクもあるので、困った時でもサポートへ日本語で連絡できることがメリットです。普通株の他、ETF、債券、FX/先物、MMF、投資信託、CFDと多くの投資商品に対応しているのも魅力です。
ただし、手数料が若干高めで、日本株の場合は0.5%(最低手数料3,000円)の手数料が発生します。米国株は、0.3%(最低手数料20ドル)です。口座維持手数料は、四半期ごとに16.05 SGD、外国株保管手数料で1銘柄につき2.14 SGDが発生します。そのため、頻繁に取引するようなデイトレ向きとは言えないでしょう。
対して、「Interactive Brokers」については、初回入金額は1万ドル(約100万円以上)となっており、口座維持手数料も毎月10ドル、更に取引手数料がかかるので初心者には中々難しいです。尚、10万ドル(約1,000万円)を預ければ、口座維持手数料が無料になります。ただ、こちらも金額的に初心者には難しいでしょう。
どちらかというと、Interactive Brokersよりもフィリップ証券の方が日本人にとって使いやすそうというイメージです。どちらにしても海外の証券会社へ入出金するには海外電信送金(海外送金)となりますので、1回の海外送金手数料で30~70ドルかかるというのも考慮が必要です。
海外在住でも取引可能な日本国内FXブローカー
ちなみに証券会社ではなく、海外在住でも取引可能なFXブローカー(FX業者)も調べてみました。
海外居住者でも日本国内のFX業者で口座開設と取引が可能なところは2社あります。
金融商品取引法で海外居住者は取引不可のはずなんですが、金融ライセンスを持つ海外支社の顧客として扱っているのか、この辺の仕組みは謎です。
- ヒロセ通商(FX取引のみ)
- セントラル短資(FX取引のみ)
ヒロセ通商の場合は、口座開設時にマイナンバーの提出が必要になるので、マイナンバーを持ってない人は口座開設できません。
対して、セントラル短資は、マイナンバーは必要ありません。現地の日本大使館・領事館が発行する在留証明書が必要です。
上記2社とも日本国内の銀行口座があることが条件です。(なので実質、海外居住者は利用できないに等しいでしょう)
日本のFX業者は、DD注文方式と言われる相対取引で、顧客の損失がFX業者の儲けになるような仕組みがあります。(一部のみカバー取引)
そのため、顧客が不利になるような約定拒否やスリッページ(注文価格と約定価格差が乖離)多発するとされています。
また、急激な為替レートの変動で値がつかないときにロスカット(自動強制決済)が間に合わず、口座残高がマイナスになってしまうこともあります。
日本では顧客の損失補てん禁止の法令があるため、マイナスになった口座残高は借金としてFX業者へ返済義務があるため、国内FX取引はオススメしません。
海外のFXブローカー
日本のFX業者と合わせて海外FXブローカーも調べてみました。海外に拠点があるFX業者です。日本での営業は法的に不可ですが、自己責任であれば国内外の日本人も利用できます。
日本では顧客の損失を補てんするのは禁止であるものの、海外FX業者においては、FX業者側が残高マイナス分の損失を補てんし、口座残高を0(ゼロ)へリセットしてくれます。
理由としては、FX業者が海外に拠点があるため、各国の顧客に損失を請求するのは現実的ではなく、法的にも請求不可であるため、逆に損失補てんのサービスを提供した方が顧客獲得ができると判断されているためです。
ただし、「条件付き出金規約があり実質出金できない」「指定した価格で注文できない」等の悪徳FX業者も多々ありますし、闇金あがりの日本人が経営に携わる海外FX業者もあるので注意が必要です。下記ピックアップした業者は、私もたまに利用している比較的評判が良かったFX業者です。
- XMTrading(XM): レバレッジ1000倍、FX、指数、商品、貴金属、仮想通貨CFD対応
- AXIORY: レバレッジ400倍、FX、指数、商品、貴金属、ETF、個別株式CFD、現物株対応(現物株はレバレッジ1倍)
居住国の税制により異なります。基本的には、居住者ならば居住国へ税金を支払うことになります。
ベトナム居住者は、全世界所得が課税対象になり、投資所得の5%が課税されます。(*その人の状況により課税額が異なることがあるので、海外の投資所得がある場合は税理士に要相談)
3. 銀行口座の外貨預金
証券会社で資産運用以外を考えた場合、銀行口座の外貨預金という案もあります。
既にご存知の通り日本円の定期預金では、高くても0.3%程にしかならないので、金利の高い外貨で定期預金ということも考えられます。
外貨預金は、金利の高い国の通貨で預金することで利息を得られるとともに、預金した外貨レートが高くなった場合は値上がりも見込める金融商品とされています。でも、ハッキリ言って全くオススメできません。
円から外貨への定期預金にすることで利回りも増え年2%〜5%程が見込めます。しかし、手数料が高く為替レートの値動きによっては大きな損失になるというリスクも大きいのがデメリットです。
また、年々インフレにより物価上昇と通貨価値が下落してしまった場合、1年後に円に戻した際は大損しているでしょう。
私も20代前半の頃に日本の銀行で外貨預金をやってみたことがありますが、全くといっていいほどお金は増えません。苦笑。 新生銀行の外貨預金シミュレーションページがあるので、そこで試してみるとどれくらい損益になるのかがイメージできると思います。
その後、ベトナムに居住して試したのが、ベトナム現地の銀行にベトナムドンの通貨をそのまま定期預金にする方法です。
ベトナムドンは、定期預金にすることで年6%程の金利を得られます。しかも銀行の利子所得は非課税です。もし、1,000万円分預ければ年間60万円を得ることができる魅力的な資産運用方法です。
ただし、ベトナムは外貨規制が厳しいので、一度でもベトナムドンで定期預金にしてしまうと規定により外貨に戻すのが難しいです。
また、インフレとベトナムドン自体の通貨安や金利低下も懸念されるので、長くベトナムへ居住する予定のない人や通貨安を回避するリスクヘッジをできない人はお勧めしません。
4. 不動産投資
資産運用の代名詞とされる不動産投資。日本の不動産は、海外居住者でも購入することができます。もちろん不動産収益の納税は日本国内です。
日本国内でも優良物件は多くあります。ただ、日本の場合は不動産会社によって物件価格は異なりますし、需要と供給のバランスや立地、地震や火災などの災害保険、委託管理会社への手数料など細かく考慮しなければ、予想していたより利回りが低くなるなんてことになりかねません。
それに時間の経過とともに不動産資産価値は落ちてきます。
また、海外在住者は銀行借入ができず現金一括購入となるので、こちらもまた限定された資産運用の手段です。
数千万単位で資産を持っている海外在住者であれば、わざわざ日本国内の不動産を購入せずとも海外には魅力的な不動産物件が多くあります。
私の住むベトナムでは、コンドミニアムやコンドテル(ホテルコンドミニアム)を外国人も(使用権を)購入することができます。(土地の売買は不可)
経済成長している国ですからコンドミニアムは年々値上がりしているのでキャピタルゲインを狙えますし、賃貸に出せば賃貸収入も期待できます。
ただし、その地の不動産事情をある程度理解していないとリスクは高くなります。もし、海外不動産を検討するのであれば、自分の居住するエリア、又は、不動産事情をある程度理解している地域に限定したほうが良いと思います。
5. プライベートバンクで資産運用
億円を超える資産を持っているのであれば、プライベートバンク(プライベート・バンキング)で資産運用という案もあります。100万ドル(1億円)からでもアカウントを作れる銀行もあります。
ただし、一般的には500万ドル以上~が条件となっているので、資産運用のハードルが高くなります。
しかし、資産運用のプロであるプライベートバンカー(日本人担当者在籍の銀行もある)が顧客の運用方針に沿って投資商品を案内してくれるので、面倒なことをせずにリスクを軽減し資産を増やしたい場合はお勧めです。(もちろん、裁量で取引しても良いです)
扱っている金融商品は、拠点国や各社多少異なるものの、「株式、投資信託(ファンド)、債券、REIT、保険、先物、為替」などが一通り揃っています。マルチカレンシー口座対応の銀行もあるので、外貨との取引が多い海外在住者にとっても便利です。
海外在住者の資産運用方法で一番自由度が高いのが、このプライベートバンクを使った資産運用方法でしょう。
私のメインの資産運用先もプライベートバンクを活用したものです。複数ファンドを組み合わせたポートフォリオで長期投資をしています。ETFや個別株は組み入れておらず、全て分配金なしのファンド(投資信託)です。
配当や分配金がある金融商品は、課税対象で毎年納税手続きをする必要がありますが、分配金なしの長期投資ならば決済しなければ課税対象にはなりません。
海外在住者の資産運用方法のまとめ
海外在住者が日本国内の金融サービスを利用するには?
- 海外赴任・海外留学なら帰国まで口座を維持できる証券会社がある
- 銀行口座は、海外赴任・海外留学向け非居住者向けサービスで口座維持可能
- 海外在住者でも年金加入すればiDeCoを利用できる
- その他の海外在住者は日本の証券会社で取引できない(→ 諦める)
- 国内FXブローカーなら海外在住者でも2社のみ取引できる
- 銀行口座、マイナンバーどちらも無いなら日本で資産運用は無理(→ 諦める)
証券会社は、海外赴任・海外留学等の理由で日本帰国予定があれば、申請後に証券を預けられ口座維持が可能です。
銀行口座も海外赴任や留学であれば、非居住者向けサービスを利用できます。ただし、既に海外に居住している人は申請不可なので、海外転出前に銀行への手続きは必要です。
また、年金加入すればiDeCoを利用できますが、年金も加入したくないのであれば、他の資産運用方法にするしか方法はありません。
マイナンバーが無い海外在住者は、日本へ一時帰国したときに住民票を一旦日本へ戻し、マイナンバーを取得したあとに各金融期間へ提出し、また出国する際に住民票の転出届をする方法を考える人も多いですが、マイナンバーは申請から交付まで2ヶ月程度かかるので現実的ではありません。
それに、転入届後すぐに転出届を出すことで、自治体の担当者によっては受理されなかったという話も聞いたことがあります。
数ヶ月の住民票を戻すことで、各種税金もややこしくなりますし、相続税課税対象から外れる海外10年超居住の件も、また1年目からリセットされてしまうので、資産の多い人は安易に日本へ転入届を出さない方が良いと思います。
海外在住者にお勧めの資産運用方法は?
- 現地の証券会社で取引 ← 一番オススメ
- 海外の証券会社で取引 ← フィリップ証券が候補
- 海外のFXブローカーでCFDや現物株取引 ← 最終手段
- [海外永住者] → 現地銀行口座の定期預金(条件あり)
- [50万ドル以上資産がある人] → 不動産投資、株式、ファンド投資
- [100万ドル以上資産がある人] → プライベートバンク(自由度が高い)
海外在住者の資産運用方法は、日本居住者よりも投資対象がかなり限定されてきてしまいます。
基本的には、現地の証券会社で口座を作り、現地株への投資や外国株取引が可能なら外国株投資やファンド投資が一般的です。
ただし、国によっては政治や為替が安定しない国もあるので、お住まいの国によって現地証券会社で資産運用が良いかどうかは各国状況が異なります。
居住国の情勢に左右されないという見方では、海外の証券会社が選択技になります。株口座については私もプライベートバンク以外の海外の証券会社を使ったことがないので、実際どんな感じかはお伝えできません。
しかし、フィリップ証券については、手数料が若干高めというデメリットはありつつも、信用度や取扱い商品の種類、日本語サポートデスクがある点などでは良さそうではあります。
また、海外のFXブローカーの中には、FX以外にも個別株やETFをCFDと現物で取引できる業者もあるので、リスク承知であれば海外FX業者も検討しても良いと思います。
相関性がない銘柄同士でポートフォリオを組めば、ある程度リスクは回避できます。また、順相関の価格差を狙った鞘取りもリスクは低くなります。(*取引業者によっては鞘取りを禁止しているところもあります)
どの資産運用方法でも大切なことは、リスクが高くならないように適切なポートフォリオを組むことです。
可能であれば、現代ポートフォリオ理論に基づき、期待リターン率と標準偏差を計算し共分散と相関係数等で導きだした効率的フロンティアの配分で投資も良いと思います。
以上、海外在住者の資産運用方法を焦点にお話しました。
最後に、どんな資産運用方法でも「元本が保証されたリターンはほぼあり得ない」ということは肝に銘じ、変な投資話に騙されたりしないように気をつけましょう。特に海外となると怪しい投資話は多いですからね(汗